北海道を離れ、関西で暮らすようになってから、もう随分経ちます。
金が無かったり、忙しかったり、両親が旅行に出てたり、と、
盆や正月を実家で過ごしたことは、ほとんどありません。
私の実家?・・・・・・つまらない街です。
田畑が延々と続く平野の真んまん中、鉄道の分岐点に、
申し訳程度の繁華街や住宅街がこびりついただけの
誠にみすぼらしい街です。
ろくな書店も電器店もなく、世の中の流行にはいつも一歩半遅れ、
人口が少ない分、世間がすごく狭い街。
冬は豪雪に見舞われ、夏はやたらと暑い街。
彼方に見える山はのっぺりとしていて、
京都の大文字山のような情緒も無ければ、
富士山のような格好良さも無い。
しかし、
京都に移り住み、関西のあちこちを訪ねるにつれ、
北海道にしかないものが色々と見えてきました。
北海道では、丘の斜面をならしたりせず、
地形の起伏そのままに麦畑を耕していることがしばしばあります。
水田なら水をはるために水平に整地しなければなりませんが、
畑はそんなものは確かに不要です。
ゆるやかな起伏を上り下りするように、黄金色にみのった小麦が整然と並ぶ畑。
あんな風景は、関西のどこにもありません。
高台に登ると、手前の山の向こうに大雪山が見えます。
北海道のどこよりも長く雪を残し、どこよりも先に雪化粧する山々。
爆裂火口をさらした円錐形の旭岳、
噴煙をたなびかせる十勝岳、
南の端にやや離れて横たわる前富良野岳------
振り返れば、
「北海道の尾瀬」とも言われる美しい高層湿原・雨龍沼を抱えた暑寒別の山々。
都会の世間に揉まれ、少しは愛想や要領が良くなった私。
でも、私の中のどこかで、
今の私に異を唱え続けている私を感じています。
「もっと、のんびり生きたいんじゃないのか?」と。
田舎生まれで、田舎の暮らしには飽きていて、
今住んでいる街も捨て難く、
周囲の友人達とは別れ難く、
住まいや仕事の当てすらないザマですが、
それでもいつか北海道へ帰るだろう。
そんな気がしています。
誰にとっても、故郷とはそんなものかも知れませんね。
蝦夷の国 つれづれ随想